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2. スターを夢見て
一緒に観た舞台は夢と光に満ちていた。
入団試験に落ちて、彼女は泣いた。
「あなたは夢を叶えてね」
日月が経ち、私は舞台に立った。
「スターになったのね」
私はまだ、皆の憧れを照り返すだけの月。
星は自ずと光を放つものでしょう?
(107文字)
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【作者註】
この作品はメモ書きなしで書き始めて、本文をひたすら校正したものです。
妻が一時期、宝塚歌劇団の某トップスターを推していたことがあり、その頃のことを思い出して書きました。
前作、「およそ百字文」の、「15.2 ひと目惚れ・クレイジー・フォー・ユー」と同じような由来です。
宝塚歌劇団の舞台に立つには、宝塚音楽学校に入るしかなく、それもまた狭き門だと聞いています。
憧れの舞台に立っても、まだ先にはいくつものステップがありますし、いくら努力してもトップスターになるのはほんの一握りだけです。
舞台に立った友人を見て「彼女」は、もはや「スターになった」と口にしますが、「私」にはそう思えなかった……何故ならまだ地位も実力も足りないから、という話です。
最後の2行は、学生時代や社会人になった頃の自分を思い出して書きました。
なかなか実力で「この人は!」と思えるほどの、光を放つことの出来る方はお目にかかれないですよね。そんな人になりたい、と憧れていた時期もありました。
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