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3. 古いアルバム
デジタルではない思い出は分厚い冊子の中にある。
アルバムを整理しよう、という話になった。
「この頃の君、どこ行ったんだろ」
目・の・前・に、いるでしょ。
あなたは写真の風景に生きてても、外の世界では誰もが時の河に流されているの。
(110文字)
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【作者註】
♪古いアルバムの中に 隠れて 想い出がいっぱい……
私たち夫婦が結婚し、ふたり目の子供が生まれたくらいまでは、写真を現像してアルバムに残しました。
♪悲しいことがあると 開く皮の表紙
私の世代は荒井由美の歌で記憶していますが、多くの歌手がカバーしているので、誰の歌で記憶しているかも人それそれでしょうね。上で使った「歌手」自体、今はあまり使わない言葉かも知れません。
デジカメやスマートフォンで撮った写真はクラウドで保管するか、大事なものは記録媒体に残すと思いますが、それってどのくらい見返すものなのだろう? と、思ったのがきっかけです。
まだ新しい技術ですから、今、見返すとしてもせいぜい20年と少し前くらいの画像しかデジタル化されていないですよね。
現像した写真ならば、古いアルバムを開いたら祖父母の若い頃の写真が出てきたとか、仏壇の引き出しに出征した曽祖父の写真があったとか、思いがけない過去が顔を出すなんてことがあるかも知れません。でも、デジタルの記憶は本人が探らない限り、写真の存在を知らない誰かの手で発掘されるなんてことは、まずなさそうです。
ちょっと、つまらないように思います。
掌編の後半部分は、女性の方が容姿を気にしている分、男性よりも時の流れを日々感じているかも知れないという、私の勝手な妄想です。
悪しからず。
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