警戒心強めの少年騎士

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「す、すみま……セイディ、さん」 「……クリストファー様」  セイディが洗濯ものを拾い、再度籠に詰め込んでいると不意に目の前から手が伸びて来て、一緒に洗濯ものを拾ってくれた。その手を視線で伝えば、その手の主はこの騎士団の少年騎士の一人クリストファー・リーコックで。彼は、セイディに気が付くとどこか気まずそうに視線を逸らしながらも、無言で洗濯ものを拾い続けてくれる。 「……クリストファー様、何かお仕事があるのでしたら、私のことは無視して向かってください。これは、私の責任ですので……」 「いえ、僕はこれから五連休で……。その、いろいろと考え事をしながら歩いていてぶつかってしまって……」  視線を下に向けながら、クリストファーは早口でそんな言葉を紡ぐ。……相変わらず、警戒されている。そんなことを考えながら、セイディも洗濯ものを拾っていく。  セイディは騎士団の騎士たちとそこそこ打ち解けられたと思っている。しかし、唯一と言っていいほど打ち解けていないのがクリストファーだった。彼はセイディが声をかけようとすれば、瞬く間に逃げ出すのだ。さらには、最近では露骨に避けられているとも感じる。……まぁ、それに文句を言うのは筋違いなので、セイディは今まで黙っていたのだが。苦手ならば、無理に関わる必要はないだろう。そう、思っていた部分も、ある。
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