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「むしろ、こうやって甘えてくださると私の疲れも取れます。なので……嫌でなければ、どうぞ」
一応とばかりにそう言えば、オーティスは一度視線を逸らすものの、こちらに近づいてくる。だからこそ、セイディは「オーティス様も、頑張っていますね」と労いの言葉をかける。その言葉を聞いたためだろう、オーティスは顔を背けながら「ありがとう、ございます」と返事をくれた。どうやら、照れているらしい。
「セイディ様。……そろそろ、お時間ですよ」
それからいったいどれだけの時間が経っただろうか。三人の少年騎士と戯れていれば、リリスがそんな風に声をかけてくる。時計を見れば、確かにそろそろ寄宿舎に戻った方が良い時間帯だ。それに、課題も出されている。そちらも、頑張らなくては。
「そうですね、リリスさん。そろそろ、寄宿舎に戻ろうと思います」
リリスにそう返事をすれば、リリスはぺこりと頭を下げてくる。だから、セイディは寄宿舎に戻る準備を始めた。戻ったら、夕食を摂って課題を済ませなければ。他、事細かな復習もしておいた方が良いだろう。
(目立ちたくない。でも、この国を守るためにも、私は役割を全うするの)
ジャレッドや元家族に見つかるリスクを考えれば、引き受けない方がよかったと思わないこともない。それでも、ミリウスはセイディの力を買ってくれた。ならば、自分が出来ることはただ一つ。この国を守るために、行動するだけ。そして、万が一見つかったときは――。
(また、移動すればいい。幸いにも、お金はあるのだから)
ここに居ることだけが、人生じゃない。それはよく分かっているつもりだ。セイディはまだまだ若い。選択肢は無限大。だから――別の道を、見つけよう。たとえ、この三人の少年騎士にお別れが言えなかったとしても。そんなことを、思った。
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