少年騎士の好意(1)

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「セイディさん、少し、よろしいですか……?」  あれから二日後の夜。夕食を摂り終えたセイディの元に、クリストファーが駆け寄ってきた。本日でクリストファー、オーティス、ルディの護衛の期間は終わりである。もしかしたら、そのことかもしれない。そう思い、セイディは「どうぞ、どちらでお話しますか?」と返事をする。そうすれば、クリストファーは「……ちょっと、外で」と言葉を返してきた。大方、人に聞かれたくない話なのだろう。 「承知いたしました。では、行きましょうか」  食堂はワイワイガヤガヤとしており、二人のことを気に留める者はいない。それにホッと一安心しているのか、はたまたセイディの了承の返事に安心したのか、クリストファーは息を吐いていた。それを見つめながら、セイディはクリストファーに続いて歩く。玄関に向かい、寄宿舎を出ていく。まだ、寄宿舎にカギはかかっていない。夜の散歩に行く者がいたり、アシェルやリオの帰りが遅くなることがあるため施錠の時間は遅いのだ。 「どう、なさいましたか?」  玄関を出てすぐの場所。夜風というにはまだ生暖かい風が吹く中、セイディは小首をかしげてそうクリストファーに問いかける。そんなセイディを見てか、クリストファーは露骨に視線を逸らす。しかし、意を決したかのように「……僕、は」と言葉を発した。 「僕、は。この三日間、すごく楽しかったです。……オーティスやルディと一緒でしたけれど、セイディさんと一緒に居られた」  俯きがちに言葉を発するクリストファーの言葉は小さい。それでも、周囲が静かなのでよく聞こえた。そのため、セイディは「私も、楽しかったですよ」と答える。クリストファー、オーティス、ルディ。そして、リリス。四人と共にワイワイとするのは、とても楽しかった。それは間違いない真実だ。今まで、こんな風にワイワイとすることは少なかった。あったとしても、それはヤーノルド神殿にともに従事していた聖女仲間とだけだった。
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