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エピローグ
今、僕と奏佑は夫夫のピアニストとして世界を飛び回っている。そんな忙しい日々の中で、ある週末、僕らは偶然にして二人のスケジュールが合い、ゆっくりと夫夫で過ごす時間を持った。そこで、僕たちはヴァンゼーで週末を楽しむことに決めた。
ヴァンゼーはベルリンの中心部から約一時間で到着する風光明媚な湖だ。深く青々とした清涼な水を湛え、周囲には豊かな自然が広がっている。
僕と奏佑は服を脱ぎ捨てると透き通るような水の中に飛び込んだ。水が冷たくて気持ちがいい。僕らは童心に返り、二人で水を掛け合ったり泳いで競争したりして遊んだ。
一しきり水の中で楽しんだ僕らは湖畔で寝そべり、水で冷えた身体を陽の光に当て温まりながら二人で抱き合い、久しぶりに濃厚なキスを交わした。
「相変わらず律は可愛いな」
奏佑がそう言って僕の頭を撫でた。
「もう可愛いなんて言われる年じゃないよ。来月には僕も二十八歳だ」
「いや、まだまだ可愛いよ。いくつになっても、律は可愛い律のまんまだ」
「じゃあ、奏佑もカッコいいまんまだよ」
「じゃあ、は余計だろ?」
僕らは笑い合った。ベルリンの空はまるで青のペンキで塗ったような綺麗な青空が広がっている。
「O lieb, O lieb, so lang du lieben kannst!」
奏佑が『愛の夢』を歌い出した。僕も奏佑に合わせて唱和する。
__________
おお、愛しうる限り愛せ!
おお、愛したいだけ愛せ!
その時はやって来る。
お前が墓の前で嘆くときが。
そして、お前にその心を開く者がいれば、
おお、彼に愛の限りを尽くせ。
いかなる時も彼を喜ばせ、
いかなる時も彼を悲しませるな。
__________
僕は歌いながら思った。この歌の歌詞を僕らなりにアレンジするならば、こうなるだろう。
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おお、愛しうる限り愛せ!
おお、愛したいだけ愛せ!
その時がやって来るまで。
われらが墓で共に眠るときまで。
そして、お前にその心を開く者がいれば、
おお、彼に愛の限りを尽くせ。
いかなる時も彼と共に喜び、
いかなる時も彼と共に悲しめ。
__________
そうだ。僕らはずっと死ぬまで愛し続ける。いや、死んだ後までもずっとずっと。どんなにお互い愛し合っていても、喜びばかりではなく悲しみの訪れる時もある。24時間365日相手を喜ばせ続けるのは不可能だ。だが、そんな時は共に涙を流し、共にその悲しみを分かち合うのだ。喜びも悲しみも僕らはいつも一緒に分かち合う。なぜならば、僕らは愛し合っているからだ。
僕らの愛はフランツ・リストのちょっとだけ先をいく。この愛は、リーベストロイメ(Liebesträume:愛の夢)ではない。今この瞬間、現実を生きるリーベスレアリテート(Liebesrealität:現実を生きる愛)なのだ。
-la fine-
*『桐谷湊くんの愛と恋の物語』にて本作に登場する国本弦哉のサイドストーリーが一部展開されています。本作で語られなかった彼の事情とは? ぜひ、こちらも併せてお楽しみください。作品URLはこちら↓
https://estar.jp/novels/25986586
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