ポカポカ陽気の木の下で

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 木の下で本を読むと、桜の花びらが栞になる季節。そんな暖かな日を過ごせる私は幸せ者だ。  「はぁーっ、解放感っ!」  午前中を乗り切った私。偉いっ。  そんな私の仕事場は図書館だ。この仕事。意外と疲れるのである。  仕事の先輩は優しいのだが、勤務中の私語厳禁なのが辛い……。話してないと気がすまない私からしたら拷問である。  さて、そんなことはどうでもいいとして。私は今、図書館の中庭でどっしりと生きている桜の木の下でお弁当を食べている。  今日のお弁当は、私のイケメン旦那さんが作ってくれた。最近まで仕事は出来ていたものの、新型コロナウイルスの余波で仕事をクビになってしまったのだ。今は絶賛就職活動中。  そんな忙しい中、朝、早起きしてお弁当を作ってくれる旦那さん。最高かよ。  こんな惚気話をしている間にお弁当を食べ終わり、私は文庫本を開いた。  今読んでいる本は、芥川龍之介さんの「鼻」  はぁ……、凄い……。よくこんな話を思いつくよ……。描写も凄く分かりやすい……。凄いなぁ……。  私が感想を言うと、凄いしか言えなくなるのだが、この作品は、いくら凄いを言っても足りない。本当に凄い。  はぁーっ、とため息をつきながら、桜の木にもたれかかった。    本だけ読んで過ごしたいなぁ。  早く仕事終わらせて家に帰りたいなぁ。  ずっと旦那さんとイチャイチャしてたいなぁ。  人間の欲は尽きない物だ。  だが、これは幸せの予兆。  いつか、その幸せはきっと来る。    「よしっ……、午後も頑張るかっ!」  私は威勢よく声を張り上げ、自分を鼓舞した。  今日も、緩やかに時は流れる。私達の幸せに向かって。
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