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episode2 第三十三話
瓦礫の撤去活動が進められていた。
かつての武器庫は粉々に砕け散り、瓦礫の山となり、そこを“検非違使”、救急、“神祇官”の面子が、担架を持ったり、ショベルカーを操ったりしてせわしなく、動いていた。
瓦礫の山のすぐ近くには“朝廷(仲間)”の死体が並べられ、その中にはタレミミ、オオミミの姿もあった。死体に布が被せられる。
「……駄目ですね。生存者は絶望的です」
死体の列を見ていたシロビクニに対し、“朝廷”の役人は言う。
「……そうね。残念だわ。それよりも……」
ここで、彼女は瓦礫の山の中を見つめる。
どうか、どうか見つかってほしい。どうか、どうか……
彼女はひたすら“ソレ”の発見を待ち望んでいた。だがーー
「シロビクニ様ぁー‼」
遠くの方から声が聞こえてきた。
それに気づいたシロビクニは急ぎ、声のする方に駆け寄り、瓦礫の山を登り、そこにたどり着いた。
「見つかりましたか⁉」
その場所は瓦礫が散らばる円形の広場だった。ヘルメットをかぶった作業員が多くおり、そしてその広場の中央にはーー元は巨大な柱のような太さ、大きさだっただろう試験管が粉々に割れていた。
それを見たシロビクニは絶句、再度、この世の終わりだとも思わん表情になり、言葉を失ってしまった。わなわなと震え、両目が自然と限界まで見開かれてしまった。
「シロビクニ様?」
ヘルメットを被った作業員の一人が顔を覗き込んだ。それに対し、シロビクニはーー
「ーーなんてこと……なんてこと……なんてことぉぉぉ‼」
それは彼女にしては珍しい絶叫だった。それは禁忌を破ったことに対する絶望の叫び。耐えがたいまでの苦痛。そして、これから待ち受けるであろう、恐怖に対するモノであった。
絶叫にびくりと身体を震わせる一同をよそに、シロビクニは血相を変えて全員に叫ぶ。
「なんてこと、なんてこと……こうしちゃいられない! すぐに“神祇官”、“検非違使”、“武士”は勿論、“陰陽師”も手配して‼ 大変なことになったわ‼ すぐに動いて‼」
「え、どうしたんです?」
役人が聞く。
「草の根分けても探し出すのよ! まだ遠くへ行っていないはず! ううん、遠くに行っていないことを祈るしかないわ‼」
「え、ですから、何を探すんです……?」
その質問に、シロビクニは叫んだ。
「“九尾狐”‼」
「へ?」
「“九尾狐”よ‼ 詳しい説明は後‼ こいつを探し出して‼ 早くこいつを殺さないと大変なことになるわ‼」
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