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episode2 第三十五話
「以上が次の作戦よ。皆、頭に入ったかしら?」
酒場の中の“組織”の基地で、ヤオビクニがホワイトボードに書かれた図を指しながら、仲間達にそう、告げた。基地内にはボロボロの戦闘服、軍服を着用した“組織”兵達。その中に交じって、タダツネと、マントを外したクガミミノミカサもいた。全員が神妙な面持ちなのに対し、この二人だけは表情が違う。タダツネはふ~んといった表情で、クガミミノミカサは氷のような冷たい、しかし、殺意のこもった目つきでヤオビクニとホワイトボードとを睨みつけていた。
「もし忘れたり、後になって疑問がわいたりしたら遠慮なく言ってちょうだい。一応、作戦直前にもう一度説明するからね。じゃ、解散」
そういうと、全員は解散していく。まぁ、出入り口は一つしかないので、そこに集中する形になっているのだが。
「しっかし……よくもまぁぽんぽんと色んな作戦を提案出せるもんだな。ヤオビクニのお嬢は。アンタもそう思わない?」
ここで、タダツネがクガミミノミカサに投げかけた。しかし、クガミミノミカサは答えなかった。
「……そういや、アンタ、ほんっとうに喋らないんだな。何でもいいからなんか話そうぜ?」
それでも、クガミミノミカサは沈黙したままだった。
「なんで“組織(ここ)”にいるのかーとか。あ、趣味とかでもいいぜ?」
「……」
「俺は出会ったこともない爺さんの復讐の為にこんな所に籍を置いているんだけどさ」
「……」
「……」
「……わーったよ。邪魔したな」
「復讐よ」
「え?」
ようやく口を開いたクガミミノミカサにタダツネは少し面を食らった。
そして、クガミミノミカサは液体金属でできた右腕をタダツネに見せた。
「コレ。ある女に右腕を叩き斬られたの。ワタシの身体を傷物にされたのよ」
「……」
「それだけじゃないわ。ワタシには恋人がいたの。命を投げ出してもいいってくらいに大切な、本気で愛おしいと思った恋人が。でも、“朝廷”の奴等に殺された……だからーー」
「ーー復讐って訳か。ホント、“朝廷”の奴等はロクな事しねぇな」
「そうよ。だから、なんとしても、特に、この右腕を斬った奴を同じ目に合わせてやるまでは死んでも死にきれないわ……タダツネ、だっけ。アンタ、ワタシの邪魔だけはしないでね。もし、邪魔したらーー」
「ーー殺すってか。わかったよ。安心しな」
タダツネの切り返しを合図に、クガミミノミカサはその場を後にした。
「物事は順調なようだなヤオビクニ」
基地の階段をのぼり、酒場に戻ってきたヤオビクニに、酒場で酒を吞んで待っていたミチナガが切り出した。
「ええ、順調よ。無事、武器庫も爆破できたし、“朝廷”も少しは弱まるはず。で、後は地上(上
)で一暴れするだけ……で、さ。ちょっとお願いがあるんだけど……」
「お願い?」
「そ。すっごく簡単なお願い。作戦当日って式典じゃん? その際にさーー」
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