僕は車椅子を押した。

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 「また、来年も来ようね。」 蕾をつけた桜の木の下で、君はそう言った。 そして僕は手を合わせた。  段々雪が溶けてアスファルトの地面が見えてきた春。だけどまだ寒い日が続いたりと、気温の変化は上がったり下がったりだった。  僕は今年で高二になる高校生だ。だが、彼女は今までいた事がない。好きな人はいる…その人は、近所に住んでいる僕と同い年の女の子だ。元々僕の親と関わりがあり、彼女とは顔見知りになっていた。だが、彼女は小さい頃から身体が弱く、入退院を繰り返してきた。それにいつも車椅子に乗っているから、外で見かける事は滅多にない。  だから僕は、学校が終わる度にいつも早足で家に帰り、勉強なんか後回しにして彼女のいる病院に足を運んだ。そうしてる内に看護婦さんや、周りの人に覚えられてよく話しかけられる。彼女の部屋は、三階のエレベーターの前の少し右の部屋で、部屋には彼女しか居ない。僕はありったけのお金で花を買ったり、本をプレゼントしたりもした。  「あんな奴の事が好きなのかよ!ハゲてるしwマジで言ってんの?」 いわゆる陽キャと言う奴にクラスのど真ん中で大きな声で言われた。僕は、制服のポケットに手を突っ込んで平静を装った。でも僕が何も言わない事をいい事に、そいつは更に調子に乗って彼女を悪く言った。  「お前、見る目ないわぁ〜ww」  「あいつの何処がいいの?ww」 段々僕の手は拳の形になっていき、手首が小刻みに動いていた。
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