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リビングは蓮の言った通り、暖房が程よく効いており快適だった。
朝食の匂いに誘われるように椅子に座る。目の前のテーブルには目玉焼き(しかも目玉ふたつ)にウインナー、みそ汁と小さなサラダ。そして炊き立ての白米が並んでいる。
「すごーい! こんなに立派な朝ごはん、全部蓮が用意したの?」
「そうだよ。てか、俺じゃなかったら誰が作るのよ……」
「ふふっ、それもそうか」
「じゃあ、食べよう」
「うん。いただきます」
「はい、いただきます」
お互い手を合わせる。
蓮が箸を持つ前に、しょうゆを手に取る。
「目玉焼きには何をかける? しょうゆ? ソース?」
しょうゆを使うなら先にどうぞ、と言わんばかりに手に取ったしょうゆを智穂に差し出す。
「私はね、マヨネーズをかける」
「えっ!?」
「え?」
顔を見合わせる。
蓮は驚きの表情を、智穂は困惑の表情を。
「目玉焼きにマヨネーズって変わってない? 卵に卵じゃん。マヨネーズは卵からできてるわけだし」
「いやいや、美味しいって」
「そうなの?」
蓮は意外そうな顔をしつつも、キッチンに戻り冷蔵庫からマヨネーズを取り出した。ほぼ新品の先日開封されたばかりのマヨネーズ。
料理をしない、と智穂の言っていた通り、このマンションの冷蔵庫に食材と言えるものは無く、調味料も砂糖と塩くらいしか存在しなかった。それを確認した蓮が一式買い揃え、現在特殊なものを除いて調味料は揃っている。もちろんマヨネーズも。
「はい、マヨネーズ」
「ありがとう。ごめんね、取りに行かせて」
「これくらい気にしないで」
マヨネーズを目玉焼きにジグザグにかける。乳白色の細い線が、目玉焼きを彩っていく。
「へぇ。じゃあ俺も試してみようかな」
「うんうん、試してみなよ」
蓮がマヨネーズを受け取り、自分の目玉焼きに智穂より控えめにマヨネーズの色彩を加えた。
その様子を見ていた智穂が、あることに気づく。
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