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出勤日の朝食
「そろそろ起きて、智穂」
柴村智穂が、微睡の中から強引に引き上げられる。
「う~ん……」
枕元のスマートフォンを手探りで探しだし、重い瞼を開けて時間を確認した。
「蓮……。まだ5時じゃん……」
もうちょと寝させて。と懇願するように頭から布団をかぶる。
「俺仕事に行くし、朝ごはん食べて欲しいんだけど」
少し得意気な金居蓮は、ワイシャツの上からエプロンをつけた姿で寝室の入口に立っていた。
今日は月曜日、蓮はこれからスーツを着込んで仕事へとでかける。智穂のマンションから。
その前に智穂と一緒に朝食を食べようと、寝室まで起こしに来たのだった。
「てか寒いし……」
三月とはいえ、早朝は冷え込む。布団の中が恋しい。
「リビングは温まってるから、一緒に食べよう」
そう言って、蓮は掛布団を剥ぎ取った。
「いやん……。イジワル……」
掛布団が無くなってもなお、体を丸めて寒さに対抗しようとする。
「温かいうちに食べた方が美味しいよ」
優しく諭すように言い残して、蓮は寝室を出て行った。その言葉は智穂にとってベッドから起き上がるだけの魅力を秘めていた。
「……起きよ」
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