15人が本棚に入れています
本棚に追加
蓮が二人分の食器をさげ、手早くすすいで食洗器へ入れる。あとは機械がやってくれるからと、出勤の準備を始める。
スーツの上着を着て、コートを羽織る。
姿見鏡でネクタイが曲がっていないか、セットした髪型は崩れていないかチェックする。
――問題なし。
スマートフォンを内ポケットに収め、ブリーフケースを持つ。
「じゃあ仕事頑張れよ」
飲みかけだったコーヒーを置き、智穂が立ち上がる。
「そっちもね」
「ついてくるの?」
「うん。玄関まで見送る」
「気を使わなくてもいいのに」
「私がしたいからやってるだけ」
二人で廊下を歩き、玄関につくと蓮が靴ベラを使って黒い革靴を履く。
――仕事に行く蓮を見送るのは初めてだ。
「遅くなりそうだったら連絡する」
「わかった。気をつけてね」
「それじゃあ、いってきます――かな?」
「そうだね。――いってらっしゃい」
最初のコメントを投稿しよう!