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W大学を落ちた時は人生を呪った。模試の判定もA判定だったのに――。 今までの努力を全否定されたような結果に、俺・矢吹魁斗(やぶきかいと)は高校を卒業した春休みの間はずっと打ちひしがれていた。 「良いじゃない、M大学の経済学部でしょう? 十分すごいわよ」 母は気にもとめてなかったが、俺は自分の人生が狂わされたように感じ、やりきれない気持ちが霧のように毎日胸の中に立ち込めた。だが―― 「なるほどね……」 俺は確信する。人生、狂ってはいなかったのだと。 これは計画通り――忘れたくても忘れられなかった彼と出会うために仕向けられた、当然の進路の行先だったのだと。
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