03 ルオヴィッツ村

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「俺、王都で住まなきゃいけないんですか?」 「ああ、大丈夫よ! 前は王宮の一角に集められて住んでたけど、数年前に制度が変わったんだって。今は届け出をすれば住まいはどこでもいいそうよ」  届け出も、この世界の人と結婚すれば簡単らしい。  プロフィールの提出と結婚届の「□渡り人」欄にチェックをして、入れ墨みたいな識別バーコードを手首に打ち込むだけに変わったそうだ。  それって。  完全に渡り人考案だよな?  なに、チェック欄とバーコードって。 「村長が調べてくれなかったら、制度が変わっていたなんて俺達も知らなかったもんなぁ」  カラウ伯父さん達は、お母さんから息子の思い人が渡り人らしいと聞いて調べてくれていたらしい。  お母さんは起き上がれなかったはずだし、どうやって知ったんだろうと思ったら。 「薬を届けに行ってたからな。そういや、いつ行っても嫁さんは食材摘みや水汲みでいなかったなぁ」  たまに、土間に見慣れない食料や調味料があったのは伯父さんからの差し入れだったのか。  オルが山で取ってきたにしてはおかしいと思ってたんだ。  お礼も言わずに食べてたよ。  まぁ、お母さんが薬を飲んでたことに安心したけど。  オルもお母さんも言ってよ。  そう思ってオルを見上げると何故か照れたように微笑まれたと思ったら、ちゅっと額にキスされた。  キス要求したんじゃねーよ。  お母さん、「あらあらまあまあ」じゃない。 「そうだ! 結婚したら、結婚の紋も彫らないとな」 「夫婦の証よ。私のが雌で旦那が雄の紋よ」 「は?」  義伯母さんが、逞しい二の腕についた刺青を見せてきた。  この国は同性婚が認められてるらしい。  ということは、伯父さん達みたいな夫婦ならともかく、同性夫婦はどっちが男役か女役か紋を見たらバレバレってことだよな。  なんでここの人達、自分達の性事情を他人に暴露してんの。  ちょっとよく分からない。
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