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それから半月ほどして。
俺達は村に住むカラウ伯父さんの家に結婚の報告に行った。
俺は甘く見ていた。
徒歩1時間っていうから、ハイキングの感覚でいたんだ。
まさか、オルの駆け足で1時間だったなんて。
歩いていこうとする俺を抱えて、オルが急に走り出した。
と思ったら、坂道の斜面を飛び降りるように駆け下りていったんだ。
悲鳴を堪えた自分を褒めてやりたい。きっと、声を上げたら舌を噛んでいただろう。
オルは身体能力がすごく高い。体も大きくて分厚い筋肉もついてるのに、瞬発力やスピードもある。
そんなオルが駆け足で山を下るんだ。
もう、気分はジェットコースターに乗ったようだ。
俺は1時間、ずっとオルの服にしがみついていた。死ぬかと思った。
多分、途中の記憶がないのは、意識が飛んでいたのだと思う。
村の名前は、ルオヴィッツ村といった。
休憩がてら中腹から見せてもらった感じでは、平屋が多くて牧歌的な村かに見えたのに、村に近づくにつれその大きさに面食らってしまった。
何が大きいって、家も大きければ村人も大きくてゴツい。男も女も、子どももだ。
「よぉ、オル! 聞いたぞ?」
オルを見つけて、暇そうにしていた門番2人が寄ってくる。
オルに抱っこされた俺より遥かに大きくて、俺は唖然と彼らを見上げてしまった。
「プロポーズ成功したんだってな! おめでとう!」
「これが嫁さんか? ちっこいなぁ!」
いや、あんた達がでかすぎるんだよ。
推定2mはあるオルよりでかいって、どういうこと?
でも、カラウ伯父さんの家に行くまでに、道を行く人達から口々に「おめでとう」と言われた。
村中が知り合いで親しいのかもしれない。
でかくて厳つくてゴリラみたいな人達なのに、気持ちが温かいんだな。
なんか、胸がほっこり来た。
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