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「ハチ、9時の方向。2匹」
「...ぶっ...、...G情報いまいらないから...!」
「...ジー...?」
「弥生くん気にしなくていいよ。なんでもないから」
あれから上2人の兄弟は叔母や母と世間話をしているようで、時折「うちの平ちゃんも見習って欲しいわ」という言葉に聞こえないふりをしながら居間で寛いでいた。
そんな中、任務を全うする気しかないらしい仁からは聞きたくもない情報が逐一与えられて、俺はお口チャックだよ!と仁の口元に人差し指を当てがった。
そうこうしていれば母親達も居間へとやってきて、つるつるとした立派なテーブルを囲み腰を落ち着ける。
「この後お母さん達、お婆ちゃんの病院に付き添うけど、あんた達どうする?」
「...あ、俺は一緒に行...」
「どうしようかなー。帰りどっか寄る感じ?たしか国道沿いにどんどんステーキあったよね、昼そこで食べるとか?それなら行く!」
「あ、俺も俺もー」
「昼食は家でお寿司の出前取る予定だから、行くのは病院だけよ」
まるでチヨちゃんの付き添いが「ついで」とでも言うかのような口ぶりに、俺は思わず太ももの上で拳を握り込む。
そうこうしていれば叔母の視線は俺に向き、平八はどうするの?と尋ねてきた。
それに対して、先程言いかけた「俺も一緒に行く」という言葉を紡ごうとする。
しかしそれよりも先に、俺の肩にはずしりとした重みが加わって、慌てて視線をそれをした当人に向けた。
「...っ..」
「ハチは家で留守番。俺たちも久々に会ったし、色々話したいからさ!それに付き添いにそんないっぱい行っても邪魔になっちゃうだろうし」
「それもそうね、わかったわ。じゃあ貴方達はお留守番。弥生のことよろしく頼むわよ」
「うん、わかってるって。母さん達も気を付けていってらっしゃい〜」
自分の意思に反して進んでいく会話に呆気にとられていれば、それを聞き届けた母達はゆっくりと腰を上げてチヨちゃんの部屋へと向かっていく。
俺もその後を追おうと立ちあがろうとするが、俺の体に凭れ掛かるようにしていた睦月によって阻まれてしまった。
「ハチ公。待てだよ、待て。俺たちがたくさん遊んであげるから、ね?」
「...っ...」
大人の目がないところではやりたい放題の2人を知っているからこそ、俺はその言葉に恐怖する他なかった。
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