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「仁くんー、おばさんもう出るから、平ちゃん起きてきたら洗濯機に入ってる洗濯物干してとくように言っておいて!」
「はい、わかりました」
自室で2度目の目覚ましを止めながら、下の階から聞こえてくる母親の馬鹿でかい声に鬱々とする。
せっかくの休みなんだからもう少し余韻に浸らせてくれてもいいだろ。
まあそんな悠長なことを言っても後で母親に怒られることになるし、それはそれで癪だ。
仕方ない。さっさと起きてやること済ませるか。
そんなことを考えながら体を起こせば、ちょうど部屋の扉がノックされた。
「入っていいよ」
「...ハチ、母上が洗濯物を...」
「ああ、聞こえてた。やっとくやっとく」
そう、あの衝撃の出来事からもう6年が経った。
時の流れが全てを解決するというが、俺の周りで起きている事はまさにそれだ。
「仁、昨日夜中になんかしてたでしょ」
「...すみません、うるさかったですか?母星に交信を図っていたのですが...」
「どうせ通じないんだしやめときゃいいのに。ちゃんと夜は寝たほうがいいよ」
「...たしかにそれも一理ありますね」
母星だとか交信だとか、こいつらやべぇ奴なんじゃ?となるような会話も俺の家では日常茶飯事だ。
それもこれも目の前で地球人に擬態しているこいつのせいだが。
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