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「これからも私はまた失う」
たった約150㎝、約38㎏の小さな小さな体。
まだまだ人生は序盤で、後何十年生きるのだろう。
そんな私の、今の人生を形作っている歴史たち。
愛していたし、愛しているよ、今でも全てが恋しくてたまらない。
ずっとずっと、忘れない。
過去は、懐かしむことしか出来ない。
もうこの手には戻らない全て。
優しく慈しむように大事に失って行けたらまだ良かった。
けれどそうはならなかった。
指先からすり抜けてく行くなんてもんじゃなかった。
怒涛のように嵐のように私を襲った、原発事故での避難中の出来事が私からその為の豊かであって欲しいと願った時間を奪った。
今、多分、やっとその時間が出来たのかもしれないと思った。
今日、やっとそんな気がした。
久しぶり。
私の恋焦がれた景色たち。
寒さが失われつつある季節。
最後に、もう一本だけ煙草を吸うことにしてまたベランダに出たら、さっきより少し風が強くなっていて、鼻水が出た。
そんな今、私は何があっても、「それでも生きる体」を持っている。
これからも、人生が終わるまで、私は生きる。
もう、自分からやめようとしたりは、多分しないだろう。
私は、今生きていて、間違いなく幸せだ。
泣きながら、笑いながら、絶望しながら、希望にすがりながら。
私は人間らしく、生きて行く。
失ったものたちを、こうして残して壊れないように。
きっとまた私は何か失うだろう。
それでもきっと、生きることを、もう自分からやめようとしたりはしない。
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