「それでも私はまだ失う」

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「それでも私はまだ失う」

ここ最近はコロナが流行してしまっていて、旅行に行く予定が全く立てられない。 私はこの世にコロナが流行する前までは、毎年春になると必ずと言っていいほど沖縄に旅行へ行っていた。 住んでいる土地を離れたいからだ。 東北を離れたいからだ。 出来れば、本島を離れたいからだ。 ニュースを、テレビの特集を、観たくないからだ。 旅行先などで外出をし、買い物をし、観光をして、ホテルには寝る時だけ戻る、などと言う忙しい日々を送っていれば、テレビをつけることもない。 私の故郷の、育った家のある場所は、原発から約2キロ。 そう、福島第一原子力発電所、つまり原発、そのすぐ側で私は生まれ育った。 東日本大震災で原発事故が起こり、放射能を巻き散らかして「ばい菌」のように扱われることとなった土地だ。 もう多分二度と戻ることは出来ないと思われる、その土地。 そこに、私の育ってきた家はある。 いや、「あった」のだ。
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