7月22日、小雨

1/3
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

7月22日、小雨

 次の雨は三週間も後だった。  ポツ、ポツと消え入りそうな雨音に、このぐらいの雨ならサークルはやるのかななんて不安を抱きつつ南さんを待つ。  16時。南さんはやってきた。  いつも以上に弾むヒールの音が聞こえた瞬間、圭は見えないのについ入り口に目を向ける。  まだ一緒に映画に行けると決まってもいないのに、夏休み前の子供のように浮かれる自分に笑ってしまう。  が、ハスキーな男の声が聞こえ、浮かれ気分はあっというまに霧散した。  よく聞けば、彼女の足音と共に近づく、もう一つの足音。  それが例の武田という先輩のものだと理解するのに、そう時間はかからなかった。 「ここ、行きつけの本屋さんなんです!」 「へぇ。良い雰囲気だね」 「そうでしょう?」  この上なく幸せそうな南さんの声。ずっと望んでいたはずのそれを聞きながら、圭は耳を塞ぎたい衝動に駆られる。  これが一歩を踏み出さず逃げ続けた臆病者の末路か。圭は自嘲気味に笑うしかなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!