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7月22日、小雨
次の雨は三週間も後だった。
ポツ、ポツと消え入りそうな雨音に、このぐらいの雨ならサークルはやるのかななんて不安を抱きつつ南さんを待つ。
16時。南さんはやってきた。
いつも以上に弾むヒールの音が聞こえた瞬間、圭は見えないのについ入り口に目を向ける。
まだ一緒に映画に行けると決まってもいないのに、夏休み前の子供のように浮かれる自分に笑ってしまう。
が、ハスキーな男の声が聞こえ、浮かれ気分はあっというまに霧散した。
よく聞けば、彼女の足音と共に近づく、もう一つの足音。
それが例の武田という先輩のものだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
「ここ、行きつけの本屋さんなんです!」
「へぇ。良い雰囲気だね」
「そうでしょう?」
この上なく幸せそうな南さんの声。ずっと望んでいたはずのそれを聞きながら、圭は耳を塞ぎたい衝動に駆られる。
これが一歩を踏み出さず逃げ続けた臆病者の末路か。圭は自嘲気味に笑うしかなかった。
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