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7月29日、大雨
窓に打ちつける激しい水音に叩き起こされた。
雨。圭の心は憂鬱に沈む。
寝不足の身体を引きずり、なんとか開店準備を終え丸椅子に座る。
ザアザアという雨音を耳障りに感じるのは、南さんと出会って以来初めてのことだった。
16時が近づくにつれ嫌な気分は増していく。
雨音が聞こえているのに。好きな人に会える日なのに。今日ばかりは、彼女に会うのがたまらなく怖い。
16時になっても彼女は現れなかった。
気怠げな革靴も。忙しないローファーも。ヒタヒタ歩くスニーカーも。ペタペタと情けないサンダルも。全部全部揃っているのに、彼女の足音だけが足りない。
そんなのは圭にとって、無音と何も変わらなかった。
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