6月30日、雨

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 時間ちょうどにあの人はやってきた。  雨音に合わせコツ、コツと踊るようなヒールの足音。この音を聞くだけで圭の胸はキュウと締め付けられる。  踊るヒールはゆっくり店内を一周し、いつも通り小説コーナーの前で落ち着く。そしてしばらく紙の擦れる音を鳴らした後、レジに向けて歩いてきた。 「本村(ほんむら)さんこんにちは! 今日はこれ一冊、お願いします」  そう言って彼女、南さんは圭に本を手渡した。 「こんにちは南さん。いつもありがとうございます」  月並みな挨拶をしただけなのに、声が裏返りそうだったとか、トーンはおかしくなかったかとか、やたら気になってしまう。  が、「こちらこそ!」という彼女の明るい声に圭の不安は吹き飛んだ。
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