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時間ちょうどにあの人はやってきた。
雨音に合わせコツ、コツと踊るようなヒールの足音。この音を聞くだけで圭の胸はキュウと締め付けられる。
踊るヒールはゆっくり店内を一周し、いつも通り小説コーナーの前で落ち着く。そしてしばらく紙の擦れる音を鳴らした後、レジに向けて歩いてきた。
「本村さんこんにちは! 今日はこれ一冊、お願いします」
そう言って彼女、南さんは圭に本を手渡した。
「こんにちは南さん。いつもありがとうございます」
月並みな挨拶をしただけなのに、声が裏返りそうだったとか、トーンはおかしくなかったかとか、やたら気になってしまう。
が、「こちらこそ!」という彼女の明るい声に圭の不安は吹き飛んだ。
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