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7月1日、晴れ
昨日の雨が嘘のような晴天。一方、圭の心はどんより沈んでいた。
好きな人の幸せを願えない自分への嫌気と、今日が晴れだという事実。それらが圭を曇らせる。
「どうした本村さん! 元気無いじゃん」
突然の声にビクリと肩を揺らす。
「なんだ、磯貝さんか」
「なんだとはなんだ。俺一応客なんだけど」
うちのお得意様である磯貝さんは、言葉とは裏腹に愉快そうな声で言った。
仮にも仕事中に客の接近に気付かないほどボーッとしていたと分かり、気を引き締め直す。
「いえ、こちらこそすみません。御用でしょうか」
「そこまで畏まらないでよ。はい、これお願いします」
彼から手渡された本からはつい昨日嗅いだばかりの匂いがする。
「磯貝さんも好きですね。テニス探偵」
「俺もって、他にそういう客がいるの?」
「こっちの話。はい、200円のお釣りです」
「どうも。で? 何で元気無いの? お兄さんに話してみなさい」
歳下のくせに「お兄さん」なんて言う茶目っ気に苦笑しつつ、それでも、少し相談してみようかなんて思う。
どこか安心するような、頼りたくなるような、そんな大人びた雰囲気が彼にはあった。
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