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「ほう。好きな女性に想い人がいる、と。青春してるねぇ本村少年!」
「少年って……僕もう23ですよ」
「奪い取れ! ガンガンアタックだ!」
あっけらかんと言う磯貝さんに圭は驚いた。もちろん、彼が適当に応えたわけでないことは声でわかっている。
「いやでも、僕なんか」
「いやいや、いけると思うけどね。本村さん良い人だし、顔も結構イケてるしさ」
「そうじゃなくて。僕は目が見えないし、普通の人と一緒になった方が彼女も幸せだろうから」
「それって言い訳じゃない?」
磯貝さんがピシャリと言う。その声には怒気が宿っていた。
「彼女が障害の有無で判断するような人間じゃないって知ってるんでしょ? だったら、目が見えないことは何のハンデにもならないよ。実際本村さんは努力の結果、大抵のことは一人でこなせるようになってるんだから。
それなのにアタックしないなんてそれは、臆病者の言い訳だと俺は思うけどね。大体、挑戦もしてない奴は嫉妬する資格すら無いんだよ」
「俺は挑戦しては玉砕してるけど」と冗談めかして磯貝さんは笑った。
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