愛されるための

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 リトルトイとリディの機械の身体は不具合を起こし続け、出来ることは段々に限られていった。 「人はこれを「老い」と呼ぶのかしら」  リトルトイにはわからなかった。彼らの身体に起きた不具合は、確かに経過年数による部品の摩耗であったり破損であったりした。「形あるものは、全て壊れる」と工場長が昔リトルトイに告げたことを、良く覚えている。自分達も同じことなのかもしれない、と彼女は言った。  そして徐々に、主が彼らふたりを見る目が変わっていったことを、リトルトイもリディもしっかりと覚えていた。彼らに気に掛ける者達も徐々に減り、そのうち彼らも部屋から出ることが難しくなっていった。  そして、彼らに残された満足に動く部位は、リトルトイが左腕と右目と発声器。リディは両耳と左目と右手。お互い違うところを喪った。どちらかどちらかの部品を渡せば、きっとまともな身体になれように、それがお互いわかっているにもかかわらず、ふたりはただ手を繋ぐ。  とある夜。リトルトイがあの機械の街を出てリディに出会って、半月。旅人がふたりの部屋へやってきた。部屋と言っても、かれらはもはや倉庫のような場所に置かれていた。よもや歩くこともままならない。聞けば、この屋敷は新しい自動人形を買い入れたという。かつてリトルトイが働いていた工場で作り上げられていた最新型。 「君達は、まだここにいたいかい?」  旅人はそう尋ねた。ほぼ置物のように扱われるここよりは、せめてあの機械の街へ帰った方が、まだ少しはいいのではないか。そう彼は言うのだった。
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