海と蛍

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「初めてましてー! 伊波です。お邪魔しまーす」  訪ねてきたのは、黒髪が爽やかな男の子。可愛らしい顔をくしゃっとさせる彼は、天王(てんのう)中学校の三年生で、宮凪くんの友達……だったらしい。  ──アイツとは仲直りしたかったな。  宮凪くんのつぶやいていた言葉が気になって、空さんへ確認した。小学生の時に親友だった子と、ちょっとした事情で今は疎遠になっていると教えてもらった。 「いや〜、春原さんとは何回かやりとりしたけど、まさか友達の家に来ることになるなんて。女子二人に囲まれて、すげぇ緊張するんだけど」 「そんな風には見えないけど。てか、うちよく分かったね。春原さんでさえ、結構迷ったらしいけど」 「余裕っすよ。何件か表札ガン見して、不審者に間違われたけどね」  テンポよく飛び交う会話に、相槌すら打てなくて一歩後ろへ下がってしまう。真木さんがいてくれて、心底安心した。私一人では、間が持たなかっただろう。 「で、頼まれてた寄せ書きと、ついでにオレも五十個折って来た」  隙間なくぎっしりと書き込まれた色紙とテーブルに置かれた鶴に、真木さんとひしと抱き締め合う。  早く宮凪くんへ渡したくて、うずうずしている。
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