海と蛍

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 残りの鶴を折る間に、真木さんと伊波くんが繋ぎに取り掛かった。  細かい作業だから、なかなか上手く出来なかったようで、伊波くんと交代しながら糸を通して折ってを繰り返した。 「オレ、ずっと海と話したかったんだ。でも、強がりって言うか、そんな雰囲気になれなくてさ。病気も知らなかったから、こうゆう機会を作ってくれた春原さんには、すごく感謝してる」  折りながら、伊波くんがしみじみと言う。初めは、唐突なお願いで不審に思われないかと心配だった。  でも、宮凪くんへ募る気持ちがあるのは、私だけじゃないと知れた。 「完成したら、お互いに伝えたいことを言いましょう」 「おう。春原さんが集めた想いが詰まってるから、海は絶対良くなる!」 「……はい!」  集まってから二時間が経過した頃には、みんなの口数も減って、ため息の漏れる音だけが落ちる。同じ作業ばかりで、疲れが蓄積されてきたのだろう。 「あとは、私に任せてください」  机に伏せる二人から、繋げた鶴を集める。五つの束をひとつにまとめて、最後にしっかりと結び上げた。グラデーションの美しい千羽鶴は、特別な存在感を放っている。 「完成だ──!」  私と真木さんは声を上げて抱き合い、伊波くんは失神したように床へ倒れ込んだ。  クーラーの風で揺れる千羽は、まるで波打つ海を泳いでいるみたいで、なんでも願いが叶うような気になれた。 「ほんとに、ありがとう。みんな、ありがとう」  ぽろぽろとこぼれ出す私の涙を拭って、真木さんが「よく頑張った!」と笑う。その瞳は、星を散りばめたようにきらきらと潤っていた。
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