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「みんなからだよ。宮凪くんのことを応援してる、いろんな人から」
黙り込む宮凪くんに、ごくりと喉が鳴る。それから背中にひやりとした空気が通って、手汗が滲み出した。
余計なことをして、と思われたかな。一気に押し寄せる負の思考を、ぐっと押し止める。
机の上に、この前置いていった紙袋が畳まれてあった。その隣に〝好きだと言いたい〟の続刊と、一緒にいれておいたお守りのキーホルダーが飾られている。
本にしおりが挟まっているから、読んでくれているんだ。気付いたとたん、胸の奥が熱くなった。
「……蛍が、みんなに声かけたのか?」
「うん。真木さんの力が大きかったけど、ね。あっ、真木さんって、前に相談した明るくて誰とでも仲良くなれるクラスの子なんだけど」
「すげぇじゃん。蛍、ちゃんと話せたんだ」
花が咲いたみたいに、宮凪くんの表情がパッと明るくなる。久しぶりに見た笑顔に、目が潤み出す。
鼻をずびっと啜るのは、不安と緊張の糸が解ける音だ。
「宮凪くんのおかげだよ」
「えっ、蛍、なに泣いて……」
「宮凪くんが、勇気をくれたの。そしたら、こんなにも素敵なものが出来上がって、私も自信がついた」
涙がこぼれ落ちても目を見開いて、まっすぐと宮凪くんを見つめる。
もう背けたくない。逃げたくない。怯えてばかりの私は、卒業したの。
「……俺、あんなひどいこと言ったのに、なんで」
気まずそうに、宮凪くんが視線を下げた。
「奇跡を信じてみることにしたの」
もうひとつの袋を渡して、宮凪くんが不思議そうに中身を取り出す。たくさんのメッセージが詰まった寄せ書きに、言葉を失っていた。
「勝手に、ごめんなさい。でも、知ってほしくて。天王中のみんなも、他にだって、宮凪くんのために協力してくれる人は、こんなにいるってこと」
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