11人が本棚に入れています
本棚に追加
涙を拭いながら、私は笑みを浮かべる。
どうか、この奇跡が明日を繋げてくれますように。
「……ありがとう。蛍、俺、頑張って生きるよ。蛍病に嫌われてるとしても、逆に友達になってやるくらいの気持ちで、負かしてやる」
白い歯に、青い光。白い河原と海ホタルが頭を過って、聞き覚えのあるセリフが入り込んでくる。
『蛍に嫌われてるとしても、いつか友達になってやる』
幼い男の子が、母親らしき人といる。
ここは、祖父との思い出の場所。あの日、海ホタルを見た河原だ。
『こんなにキレイなのに。どうして嫌われてるの?』
『これ、病気なんだよ。体が光るのは普通じゃない。幼稚園のみんなも言ってる』
水をすくう男の子の手が、星屑を散りばめたように光を放っている。
『いいか、蛍。大きくなって、もし仲間と逸れた海ホタルを見つけたら、手を差し伸べてやれ。こうして、優しく救うんだ』
その手を覆うように、祖父が私の手を重ねた。まるで蛍を持っているみたいに見える。
『すごーい! キラキラ』
『僕、すごいの?』
『うん、特殊能力みたいだね』
『これでもう大丈夫。君と蛍は、もう立派な友達だ』
隣にいる母親は、声を震わせて泣いている。
──思い出した。あれは海ホタルではなく、人の光。宮凪くんの蛍だったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!