海と蛍

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 涙を拭いながら、私は笑みを浮かべる。  どうか、この奇跡が明日を繋げてくれますように。 「……ありがとう。蛍、俺、頑張って生きるよ。蛍病(こいつ)に嫌われてるとしても、逆に友達になってやるくらいの気持ちで、負かしてやる」  白い歯に、青い光。白い河原と海ホタルが頭を過って、聞き覚えのあるセリフが入り込んでくる。 『蛍に嫌われてるとしても、いつか友達になってやる』  幼い男の子が、母親らしき人といる。  ここは、祖父との思い出の場所。あの日、海ホタルを見た河原だ。 『こんなにキレイなのに。どうして嫌われてるの?』 『これ、病気なんだよ。体が光るのは普通じゃない。幼稚園のみんなも言ってる』  水をすくう男の子の手が、星屑を散りばめたように光を放っている。 『いいか、蛍。大きくなって、もし仲間と逸れた海ホタルを見つけたら、手を差し伸べてやれ。こうして、優しく救うんだ』  その手を覆うように、祖父が私の手を重ねた。まるで蛍を持っているみたいに見える。 『すごーい! キラキラ』 『僕、すごいの?』 『うん、特殊能力みたいだね』 『これでもう大丈夫。君と蛍は、もう立派な友達だ』  隣にいる母親は、声を震わせて泣いている。  ──思い出した。あれは海ホタルではなく、人の光。宮凪くんの蛍だったんだ。
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