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宮凪くんの葬儀が終わって、三日が経った。
伊波くんから線香をあげに行ったと聞いたけど、私は当分行けそうにない。
明日から学校が始まるというのに、心はどこかに置き去りのままだ。
残されている『ウミノホタル』のページを開くと、宮凪くんに会える。でも──。
会いたい。
亡くなる前日の投稿で、時は止まっている。それを見る度に、止めどなく涙があふれて動けない。
宮凪くん、私も会いたい。もう一度……、会いたいよ。
新学期が始まって、塞ぎ込む日々が続いた。もう一週間、学校へ行っていない。真木さんからのメッセージも読めなくて、ベッドから出られないでいた。
生きる気力が薄れて、何もやる気が湧かない。
スマホが鳴って、ぼんやりと目を向ける。宮凪空の名前に飛び起きて、ベッドの枠でかかとを強打した。
「いっ……」
悶えてうずくまると、床に置いたスマホの画面に文字が浮かぶ。
『海の遺品を整理していたら、たくさんの手紙が出てきました。きっと、あの子にとって春原さんは心の拠り所だったのだと思います。本当にありがとう』
体中の水分が枯れるほど泣き通したはずなのに、ほろりと涙がこぼれ落ちた。
宮凪くんとの手紙は、全て保管してある。宮凪くんも、取ってくれていた。その事実に救われた気がする。
何日かぶりに机へ向かって、手紙を書いた。伝えきれなかったこと、話しておきたかったこと。文字にすると不思議と心が落ち着いて、少しだけ体が軽くなった。
足が進まなかった学校へも、通えるようになった。受験生があまり休んでいてはいけないと、気を引き締めることにして。
「来週からテストやだなぁ〜。春原さん、ちょっと教えてくれない?」
「うん、いいよ」
真木さんは相変わらず優しくて、教室でもよく声をかけてくれる。
「あの、私たちも、一緒にいいかな?」
「もちろんだよ」
以前は話さなかった人とも、少しは会話ができるようになった。孤独と感じていた以前が、まるで幻想だったみたいに。
宮凪くんへの想いを引き出しに秘めたまま、白い景色が過ぎ去って、私は中学を卒業した。
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