epilogue

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 春原蛍さま  お元気ですか?  あらたまって書くのは初めてだから、少し照れくさいです。  何を書いたらいいのか悩むなぁ。  とりあえず、涙ふいて。  これを読んでるってことは、俺はもういないんだな。  あれ、泣いてねぇよって?  少しは寂しがってくれてると、嬉しいんだけど。  蛍といた時間は、生きてきたなかでほんのわずかな時間だったけど、俺にとっては全てだった。  蛍の顔を思い出しながら書いている今も、会いたくてしょうがない。  ナイトアクアも、高校も、それから蛍の約束も叶えられなくてごめん。  嘘ばっかりついて、ごめん。  蛍の笑顔が好きだから、楽しい思い出のままにしたかった。  俺にとって蛍は、立派な友達であり、初恋の子でもあるんだ。  こんな奴と一緒にいてくれて、ありがとう。  最後に、もうひとつ俺のわがままを聞いて。  どんなに悲しいことがあっても、つらくても、生きていてほしい。  好きな人が出来て、結婚して、楽しいこといっぱいの未来の片隅で、たまには俺のことも思い出してほしい。  あー、あんなヤツいたなってくらいでいいからさ。  だから、泣きたくなったら上を向いて。  いつも空のどっかから、応援してる。  じゃ、またな。                 宮凪海  目で追う文字が滲んで、最後まで読めなかった。手紙の返事をもらえるなんて、思いもしなかったから、手が震える。  夢の中にでもいるようで、実感が湧き始めたのは、三週目に読んだあたりから。  これまで保管してあったメッセージの上に、新しく手紙が増えた。宮凪くんからの、ラストレター。  いつも使っていたパステルブルーの便箋を取り出して、私もペンを握る。  奇跡の手紙に、返事を書くため。 ***
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