神様のいたずら

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「うん、なんかそんな顔してた。たまには、友達と息抜きしなよ」  じゃな、と背を向けて去って行く。  見かけによらず、いい人そうだったな。あっ、お礼を言いそびれてしまった。そんなことを考えていると、一分も経たないうちに戻って来た。  えっ、なに? 見ていないふりをして立ち去ろうとするけど、視線が奪われる。海賊船の中から、何かを持ち出してきたから。  たぶん、あれは私が今朝貼ったウミちゃんへの手紙。 「あ、あの」  人は窮地に立たされると、底知れずの勇気が出るらしい。あと先何も考えず、気付いたら呼び止めていた。 「そ、その手紙、私のなので……」  返してほしい。そこまで来て、肝心なところで力尽きる。情け無い。  言葉に詰まる私と手元の紙とを交互に見て、彼がぽつり。 「……えっ、ホタル?」  この人は、どうして私の名前を知っているんだろう。  いちにと瞬きする間に、再び入った海賊船から戻って来て、ぽかんと立つ私へ何かを差し出した。 「俺だよ、ウミ。まあ、ほんとの名前じゃねぇけど」  そう笑う彼の手にあるのは、返事の書かれた紙だった。  字も綺麗で大人びて感じていたから、てっきり女の子だと思っていた。  嘘……でしょ? この人が、ずっと手紙交換をしていた〝ウミちゃん〟だったなんて。 『よかったら今度、会って話さない?』  受け取ったメッセージから、しばらく視線を上げられなかった。
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