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青い宝石
「蛍ってさ、頭良いわりにどんくさいよな」
雨がしとしと泣き止まない中、公園の海賊船で雨宿りをしていたら、紺色の傘から顔が覗いた。
くくっと笑いをこらえているのは、ウミちゃん……いや、宮凪海くんだ。
泥跳ねした白靴下をそっと隠して、少し奥へ距離をとる。いくら手紙交換をしていたと言っても、すぐに慣れるわけじゃない。
こうして何度か会っているけど、紙を通さず直接話すのはまだ緊張する。
落ち着かないでいると、濡れた傘を置いて、宮凪くんが隣へ入り込んだ。
とんと肩が触れて、頬が熱くなる。茜色の空が隠してくれてよかった。
「手紙だと話してくれるのに、会うと大人しいのな」
「……それ、言わないでよ」
「前書いてた学校の人とどうなった? 話しかけれたのか?」
真木さんのことだ。少し前に、明るくて誰とでも仲良くなれる子がいるけど、なかなか輪に入れないと相談したことがあった。
男の子で、しかも会うことになるなら話さなかったのに。
「……まだ、勇気が出なくて」
「ふーん。俺にはよく分かんねーけど、そういうもんなの?」
スマホをいじりながら、まるで興味がないみたいな返事。正反対の性格の宮凪くんに、この気持ちは分からないよ。
こんな私といてもつまらないのに、どうして会いに来るんだろう。
約束をしているわけじゃない。ただ、帰りに公園へ寄ると必ず宮凪くんが来る。私の方こそ、まっすぐ帰ればいいのに、足が向かうのはどうしてかな。
「ほら、これ」
見せられたのは、この前の子猫が写った画像だった。引き取ってくれた人が、SNSに載せているらしい。
「こいつの名前、なんだと思う?」
「えっ……分かんないよ」
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