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運命の人
この人とは合う。
手を握った瞬間に分かった。今度の人は多分、間違いない。
(運命の人、だ)
握られた右手は手のひら同士を重ね合わせていたので、思いきって私は指を絡めてみる。相手の体がぴくりとして、動揺したのを確認した。
拒否される? これでお断りされるならここまでだ、と身構える。
ところが、見た目より少しふっくらした男の指先は、もっと深く、私の五本とも編み込むように絡めてきた。じんわりと、密着する男の手は温かい。
じっとりと湿度を伴うので、手汗かと思ったが、自然と不快感はわかない。まるで半身浴しているような適温は、私の心に落ち着きとドキドキを同時に、鼓動を速まらせる。
男の体温が。
男の血液そのものが、二枚の皮膚を通して、私の血管に流れ込んでくるようだ。
まるで、血と血を混ぜ合わせようとするように。
(どうしよう。何か、ドキドキする)
自分があからさまにときめいているのを実感して、戸惑った。早鐘を打つ脈の速さすらも、手を繋いだ先の男に伝わってしまいそう。
数分前、会ったばかりの人なのに。
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