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マタタビ嗅いだ猫。頭上から降る優しい男のことばに包み込まれ、私の喉の奥がにゃおんと鳴いた。
巧いことを言う。
「どうなさいました?」
男の柔和な顔が近付く。
ふわりと男の体温を宿した香りが、するすると私の中に入り込んでくる。
自分の本能が、脳からアクセルを踏んで心臓に流れ込んでいく。鼓動はフルスロットルに高まり、止まらない。
「大丈夫ですか? ずっと顔が赤いですよ」
「あ、大丈夫。大丈、ぶ……」
心配そうに覗き込んでくる男の顔は、鼻先が触れそうなほど近い。
ああ、いい匂い。いつまでも嗅いでいたい。
キスしたり抱き合ったり、好きな相手と触れ合うのは、体液の交換だと専門家が言っていたのを思い出す。
だとしたら、この男の手のひらから流れこんで、『私の中に入ってくる』ものは。
「ごめんなさい、大丈夫じゃないです」
出会って5分も経たないのに、名前も知らない男に、私から唇を重ねていた。
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