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「気になっていた彼女とうまくいきたい。けれど、彼女はあなたを知らない。電車で見かけた以来、あなたの一方的な片思いだ。ならばどうする?
そう、認知度を増やすしかない。既視感を増やすだけでも、無意識下にあなたの存在は認知される。
下手に声かけて、成功率の低いナンパをするよりましでしょう。あなたの姿を彼女の視界に、定期的に読み込ませておいた。街中でも、店員の姿でも、どこかでみたVTRの中でも、あなたの像が映っていれば『どこかで会った気がする』と認知される。
そして、初回接触。
すでに間接接触をしている彼女からしたら、あなたは配偶者対象に含まれている。あとはクロージングすればいいだけです。彼女の好みだったら良いわけです。彼女の『遺伝子の好み』であればいい。
……好きな人とは抱き合いたいたいでしょう? その時、相手の匂いを好ましいと思いますよね。逆に、どんなに気になる人でも遺伝子レベルで拒絶したら、どんな匂いも受け入れられない。
そしたら簡単ですよね。彼女の遺伝子好みの匂いを、あなたに付与すればいい。そして、手を繋ぐ。手のひらは、安心と愛と刺激を人間に与えますからね」
彼女を手に入れた透明の手袋を見つめながら、男は表情を曇らした。
嬉しいのに、嬉しくない。依頼したのは自分なのに。
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