悪役令嬢の話し

転生

ライト様は授業が終わるとすぐに教室を飛び出した。

このままここにいるとヒカル様に付きまとわれるからだ…

そして方向を見るに先生の元に向かったのだろう。

私は次の授業の用意をしいると…

「マリン様、少しいいですか？」

ヒカル様が私を見下ろしながら不機嫌そうに声をかける。

「ちょっとあなた！マリン様にその態度はないでしょ！」

たまらずに友人が注意すると涙を溜めて隣の男子生徒に助けを求めた。

「きゃ！怖い…ヒカル泣いちゃう…」

男子生徒の肩を借りて隠れる。
男子生徒は嫌そうに肩を引くがヒカル様はそんな様子に気が付きもしない。

皆、呆れて言葉も出ない…
その様子に満足そうにすると教室を出ていこうとする。

教室のみんなが心底ほっとすると…

「マリン様、来てください！」

教室を出ながら私に声をかけてそのまま行ってしまった。

「何あれ？」

「信じられない、マリン様にあの態度？あの子庶民のでよね？」

「侯爵令嬢のマリン様に命令したわよ！マリン様行くことありません！もう先生に言って罰を受けて貰いましょう！」

「俺伝えてくるよ！」

「俺はライト王子を呼んで来ます」

皆が口々にファローしてくれる。

「皆様ありがとうございます。でもここは私がちゃんと伝えてきますわ。今後この様な態度を取らないようにやはり言わないといけまけんね…」

あまりこういう事をしたくないが皆が迷惑をしている以上私が言うのがいいだろう。

教室のみんなに心配そうに見送られ、私はヒカル様の後を追った。

ヒカル様は私を庭園の人の少ない場所へと連れていく。

そしてくるっと向き合うとキッ！と睨みつけてきた。

「ちょっといい加減にしてくれない？いつになったらあんた断罪されるのよ！」

「断罪？私何かしましたか？」

身に覚えの無いことに首を傾げる。

「光の魔法の持ち主で愛し子の私に対する不敬ですー！あんたはこの後国王からこの国から出ていくように言われるのよ！」

「え？」

この前国王様に会ったけどそのような事は何も言われなかった。

それよりも早くライト様との孫が見たいとからかわれたくらいだった。

「なぜそのように思うのですか？」

「それは私が転生者だから！ここは私が前世でやってたゲームの世界なのよ！私はここの主人公に転生したの！これからライト王子と結婚して幸せになるの…まぁ魔王とか出てくるけどそれも落として私のハーレムを作るのよ！」

はぁはぁと興奮しながら息を巻いていた。

「転生…ゲーム？前世に魔王？」

聞きなれない言葉に言葉の半分も理解出来なかった。

「あんたは及びじゃ無いのよ！」

ドンッ！と肩を押されて尻もちをついてしまった。

まさか手を出してくるとは思わずに驚く。

立ち上がろうとして手をつくと痛みに顔を顰めた。

「ふん！か弱い振りが上手いわね！闇魔法の持ち主が！」

「闇魔法？私は水魔法しか使えませんよ…」

ヒカル様が誰の事を言っているのかわからなかった。

「もういい加減にしてください」

温厚な私だって怒る時はあるとヒカル様を睨みつけた。

「ふふ、本性を表したわね」

ヒカル様はそんな私の態度に満足そうに笑っている。

「その顔、あのゲームの悪役令嬢にそっくり！髪色を変えたってわかるわ！」

「髪色？」

私は生まれ持ってからずっとこの色だ。

ヒカル様はそんな私の髪をガシッと掴む。

「痛い…です」

髪を引っ張られて痛みに顔をしかめていると…

「そこまでだ！」

ライト様の声に私はホッと胸が熱くなった。