結末

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結末

「ライト様ー!」 ヒカル様は私に向かっていた冷めた顔をコロッと変えるとライト様に抱きついた。 「聞いて下さい!マリン様が酷いんです!闇魔法で私を殺そうとしたんです!」 「闇魔法で?」 信じられないとライト様は私とヒカル様を見つめた。 私は違うと首を振ろうとするとヒカル様が続けて私に喋らせようとしない。 「みなさんも聞いてください!この人は私がライト様と仲がいいのを妬んで嫌がらせをしてきたんです。先生に言って無理やり席を変えたり、ライト様の場所を教えなかったり…しまいにはこの間のお休みに家まできて侮辱してったんです!」 ヨロヨロとふらつきながら目に涙を溜める。 その姿は儚く助けてあげなければと思わせるようだった。 しかし… 「それは全て私が先生に言った事だ。それにこの前の休みは私とマリンはずっと一緒にいた。君の家になど行ってないが?それにな…マリンが使えるのは水魔法だけだ。それは学園が調べて把握している」 ライト様が仮面を外してヒカル様を睨みつけた。 「私への嫌がらせなら我慢しようと思ったが…まさか私のマリンにまでこのような嫌がらせをしていたとは…君の悪質な嘘は心底呆れる」 ライト様に冷たい視線を向けられてヒカル様の余裕だった顔が歪んだ。 「え?ま、待って…なんでライト様がマリン様と仲がいいの?だってライトは私が好きよね?」 まるでわかっているとばかりに聞いてきた。 「君を好きだった事など一度もない!私がこの先も愛しいるのはマリンだけだ」 「ライト様…」 私はこんな時なのに頬が熱くなる。 ライト様は好きだとは何度も言ってくれていたが…愛していると言ったのを聞いたのは初めてだった。 「嘘!嘘!ここはアオイライト王国のゲームの世界よね?私は主人公のヒカリよ!ライトよく見て!」 ヒカル様がライト様に必死に詰め寄る。 私はそれが何となく嫌で二人の体を引き離した。 「私のライトに触らないで」 「マ、マリン!」 ライト様は嬉しさのあまり後ろから抱きついてきた。 「ラ、ライト様!」 公共の場では抱きつく事などしなかったのでライト様の行動に私は戸惑った。 「嬉しい…今君は僕に嫉妬してくれたんだね」 嬉しくて破顔しながら私の顔を間近で見つめる。 あまりにも嬉しそうな顔に全てを許しそうになる。 「ライト様、それはまた二人の時に…今は皆が見てますから…」 微笑ましそうに皆に見つめられて私は真っ赤な顔を隠した。 「ちょ、ちょっと!私を無視してんじゃないよ!どうなってるの…あんたは悪役令嬢でしょ!」 ヒカル様に指をさされて睨まれた…でも幸せな今、何も怖くはなかった。 「そこまでだ!」 するとあまりの騒ぎに王宮から国王や兵士達まで駆けつける事態となってしまった。 「へ、陛下!?」 私は慌てて膝を付いた。 周りで見ていた生徒達も膝を付く中、ヒカル様だけがふんぞりかえって立っていた。 まるで国王が来るのを待っていたかのように… 国王は怪訝な顔をして一人立つヒカル様を見つめる。 すると兵士の一人がヒカル様の元に行くと剣を構えた。 「いくら子供だとしても不敬である!すぐに膝を付け!」 「はーい!兵士さんたら怖いなぁ、でもお仕事してる姿も素敵です」 場違いに高い声を出して兵士に向かってウインクした…… その場の誰もがヒカル様の態度に呆れを通り越して怖くなる。 兵士も気持ち悪がってそれ以上何も言わずに一歩下がった。 「コホン…いいかな?何やらこのところ学園の風紀が乱れていると報告があった。私の息子や大事な娘(義理)も通っているから心配してこうして来てみれば…」 陛下はジッとヒカル様を見つめた。 するとヒカル様はポっと頬を赤らめて両手で頬を押さえた。 「そんな娘なんて恥ずかしいです!確かにいつかお父様になるわけですが…まだ早すぎます!」 腰をくねらせて喜ぶ仕草に陛下はこの娘は何を言っているのかと息子のライト様を見つめた。 ライト様は手に負えないと首を振って、片手で抱いていた私の腰を自分の方へと引き寄せた。 その行動に頬を染める私をみて満足そうに頷き、事態を把握してくれた。 「あい、わかった。そなたはこの学園に編入したという光の魔法を使う者だな?」 ヒカル様に向かって陛下が問いかけた。 「はい!世にも珍しい光の魔法の持ち主のヒカルです!この度王様に会ってどうしても言いたいことがありました!」 「わかった、それは後で兵士が聞く。今は大人しく口を閉じていなさい」 「え!ちょ、ちょっと待ってよ!私は今話さなきゃいけないのよ!王様と王子とこの悪役令嬢のマリンがいるこの場所で!」 「「悪役令嬢マリン?」」 その場にいた誰もがその言葉に怪訝な顔をする。 「はい!私はそこのマリン様にライト様の仲を妬まれ大変な嫌がらせをうけました!今すぐにこの国から追い出してください!」 ヒカル様は勝った!とばかりにニヤニヤと笑って私を見つめる。 私はその姿に哀れに思い顔を逸らした。 これ以上見ていられなかった… 「ほらね!その顔!間違いない!アハハハ!ゲームクリアよ!」 ヒカル様は何を思ったのか誇らしげに叫んだ。 「わかった。この者は心が壊れておるようだ、今すぐ捕らえて牢屋付きの病院に収容せよ」 陛下は悲しそうに首を振って沙汰を言い渡した。 「「「はい!」」」 兵士達がヒカル様を取り押さえる。 その姿を見ていられなくて私はライト様にしがみついた。 「何よ!そんなしおらしい姿をして、みんなを騙してんじゃないわよ!ライト様お願い騙されないであなたの運命の人はそいつじゃなくて私なの!」 ヒカル様は必死に手を伸ばしてライト様を掴もうとする。 ライト様はたまらずにその手を振り払った。 「騙されてなどいない、私の運命の人はマリンだ。君が私に近づくことは今後一切ない!」 そこにはヒカル様になんの感情もないライト様の姿があった。 「早くこの不快な女を連れていけ!マリンが可哀想だ」 ライト様に優しい包まれその姿を隠される。 その事に幸せを感じていた。 ヒカル様はその後も喚きながらもどうにか収監された。 やはりよく分からない単語を口走っているようである。 特に私に対して悪役令嬢と何度も何度も言っていたそうだ。 私は後日王宮に呼び出されてその後の話しを聞く事になった。 「この度は大変だったな、マリン嬢も不快な思いをしただろう。あの様な者を学園に入れたことを後悔している」 陛下がすまなそうに瞳を伏せた。 「ずっと変な事を言う人でしたね、珍しい光の魔法の持ち主だとか、私の運命の人だとか…」 ライト様が思い出しては嫌そうな顔をした。 「珍しくもない光の魔法が使えるからってなんだと言うんですかね?」 話しを聞いていた大臣も首を傾げる。 そう、この国はほとんどの人が光の魔法を使えるのだ。 でも使い道がないのであまり公言しない。 昔は魔族や魔物がいた時代は重宝されたそうだが…それは私達が生まれるもっとずっと前の事だ。 「確か…ずっと昔の文献に光の魔法の第一人者が現れて国を救ったと書いてあったなぁ…」 「でも今は魔物もいないし平和そのものですからね」 皆がヒカルの言ってた事に首を傾げるばかりだ。 陛下からはこれからも息子と仲良くして欲しいと…そしてまた孫の話しをされた。 私は苦笑して努力しますと答えて部屋を出ていった。 そしてライト様の部屋で待つように言われていると… 「おまたせ」とライト様が笑顔で部屋へとやってきた。 「はぁ…ようやく元に戻れる」 全てが終わり安心したのか私に抱きついて髪に顔を埋める。 私はそれをしっかりと受け止めた。 「あの者は至極迷惑で不快だったが…そのおかげで君への思いを再確認する事ができた。君の気持ちもわかった事だけは感謝だな」 「もう」 私はライト様を軽く睨む。 「でもよかった…ヒカル様は可愛らしい方でしたから、普通にしてたらライト様の気持ちも移ったかもしれませんね」 ライト様はそう言われて少し考えてから首を振った。 「いや、どんなに可愛らしくて素敵な人でも君には敵わない。君とは幼い頃から一緒に歩んできた時間がある。それを無いものにしていきなり現れた者に心を動かされる事はない」 ライト様の言葉にその通りだと私は頷いた。 「これからも二人で幸せになろう」 「はい」 私達は固く手を結び…誓いのキスをする。 私は悪役令嬢なんかじゃない、侯爵令嬢で王子の婚約者として当たり前の事をしただけだ。 だからこそ当たり前の幸せを手に入れただけ…
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