本編

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名前を呼ばれ確信した後、カバンを探ってA5のクリアファイルから進路相談の用紙を取り出した。 「えっとね、五番目。最後から二番目」 「俺も明日希望だったの。俺は何番目?」 「多根君は最後だね。私のあと」 「ふうん。結構待つな」 「他の人たちは部活を抜けて来るみたいだけど、うちらは暇だね」 「帰宅組を先にして欲しいよな」 「そうだね」 きゃー、この会話、最長じゃない? 奈穂は内心舞い上がる。 これしきの事でこの高揚感。 あーやっぱり、もう間違いないや、認めるしかない。 「明日、雨降んのかな」 多根君がぽつりと呟く。 奈穂越しに窓の外に降り続く雨を見ているようだ。 奈穂は慌ててスマホの画面を操作する。 そして、毎日チェックしているお天気アプリを画面に広げた。 「天気予報だと、晴れだね。梅雨の晴れ間に青空が広がります、だって」 残念、相傘を実現出来るまたとは無い機会だったんだけどな。そう上手くはいかないか。 「晴れかぁ…」 多根君の声は何故か少し残念そうだった。 けれど、奈穂の心は浮き足立っていた。 ピチピチと窓枠を跳ねる水音にさえ、胸が弾んだ。
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