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「じゃぁ、俺ね、うーん…ミルク」
「牛乳か…うーん」
「ミルクだけどね」
「ぞうきん!」
「また、斜めだなぁ…掃除」
「当番」
そうやって、思いがけずも楽しい時間が過ぎていく内、奈穂の気持ちも徐々に解れてきた。
「親指」
「内履き」
「なんで内履きなの?」
「だいたい親指んとこから穴が開くだろ」
「確かに~」
奈穂はくすくすと笑う。
「内履きかあ、じゃあ下足箱」
「玄関」
「玄関か、う~ん…」
「佐伯さんさ、帰りいっつも玄関で一緒になるじゃん」
ゲームを中断し突然投げられた言葉に、奈穂は一瞬固まるが、平静を装って答えた。
「私も多根君も部活やってないからね」
「いつも傘忘れないね」
「えっ?…あ、うん。折畳み傘を常備してるから」
「俺、すぐ忘れる」
「そもそも最初から差してないよね?朝も友達に入れてもらってるし」
多根君は頭を搔いて、俯いた。
目の前に晒された旋毛からひょこんと跳ねた髪が目に入る。
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