雨傘れんぼ

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多根君はどうやら傘を持たないタイプらしい。 生徒玄関のポーチに立ち、途方に暮れたように上を見上げる様子を良く見かける。 ひとしきり粘った挙句の選択は、友達の傘に入れてもらう(何故か渋々)、もしくは、濡れる覚悟で外へ駆け出す、の大抵二択であるようだ。 稀に、ビニール袋を頭にピッチリ被り、頭以外はびしょ濡れで帰っている姿を見るが、あれは止めた方が良いと思う。 「せっかくのイケメンが台無しなんだもん」 「ライバルが減って良いんじゃね?」 友人は奈穂のオヤツのスナック菓子を断りもせずに口に入れ、小気味よい咀嚼音を立てる。 奈穂は取り出し口を友人に向けながら、口を尖らした。 「ライバルって、別に…ただ、気になるだけだもん。つい、見ちゃうというか」 「…それが、恋なんじゃね?」 「別に…どうこうなりたい訳じゃないし」 「面白くねぇの、ね、奈穂っち寝癖直しのミスト貸して」 奈穂は大きめのトートバッグからボトルを取り出して友人に渡す。 「ほんっと、奈穂って何でも持ってんね。助かる~」 友人はすかさずコームを取り出して、ミラー片手に、少しうねっているだけの髪を整え出した。
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