まだ?

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まだ?

 心臓がいつまでもうるさいし、何とか座っているものの落ち着かない。 「では……いってきます!」  微笑む看護師とベッドと共に見えなくなった息子。  事前に手術は一時間ほどと聞いていて、そろそろだとそちらを見てもドアは何度か開くのに呼ばれない。  やっと声をかけられたが呼ばれたのはうちではなくて、安堵したような家族がベッドと共にエレベーターに乗り込んでいくのを見つめる。 「ねぇ、もう一時間経ったよね」 「……あぁ。……どうしたんだろうなぁ……ま、もうすぐ呼ばれるだろ?」  看護師に案内された待ち合いスペースで何度この会話をしただろう。  よくドラマで見るような“手術中”の文字なんてものはなく、薄暗いソファーだけの廊下もない。  顔を上げれば目に入るのは壁一面に描かれた柔らかい動物たちのイラストと明るい絵本の森の中にでも居るような廊下で、いわゆる手術室には目の前のドアにさえ行くことはできなかった。とてもその先が手術室だとは思えない宇宙空間のような夜空に星を散りばめて所々に惑星が吊るされたその奥には。  それまで泣いていて「すみません!ママも乗っちゃって下さい!」なんて、私もベッドに乗せられて抱っこすることになった二歳の息子でさえ、キラキラ光る壁や天井、その奥に興味津々でにこにこ笑って連れられて行った。
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