友人Fの本懐5 - 雨宿りの庭 -

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当時は私も、頻繁にFと会っていたので、どの位経ってからの事かわからないのだが、また夏の雨の日にその家の前を通りかかった。 すると縁側の窓も閉められて、少し暗いイメージがした。 「あれ、爺さんおらんのかな…」 とFはその家の玄関のチャイムを鳴らした。 しばらくすると少しげっそりした老人が出て来た。 「おお、お前らか…。すまんの…。ちょっと風邪ひいたみたいで…。何十年と風邪なんてひいた事なかってんけどな」 と咳込みながら老人は言う。 Fはじっとその老人を見て、 「それ風邪ちゃうわ…」 そう言うとそのまま老人の家に上がり込んだ。 訳がわからず、私も一緒に家に入ったのだが…。 そして、仏壇のある部屋に入った時に、夏という事もあったのだろうが、何か妙な熱気の様なモノを感じた。 ふと仏壇の前を見ると遺影の老婆が座っていて、こっちをじっと見ている。 私に見えているのだがら、Fにも見えていたのだろう。 Fはその仏壇の前に座り、蝋燭と線香をつけた。
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