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当時は私も、頻繁にFと会っていたので、どの位経ってからの事かわからないのだが、また夏の雨の日にその家の前を通りかかった。
すると縁側の窓も閉められて、少し暗いイメージがした。
「あれ、爺さんおらんのかな…」
とFはその家の玄関のチャイムを鳴らした。
しばらくすると少しげっそりした老人が出て来た。
「おお、お前らか…。すまんの…。ちょっと風邪ひいたみたいで…。何十年と風邪なんてひいた事なかってんけどな」
と咳込みながら老人は言う。
Fはじっとその老人を見て、
「それ風邪ちゃうわ…」
そう言うとそのまま老人の家に上がり込んだ。
訳がわからず、私も一緒に家に入ったのだが…。
そして、仏壇のある部屋に入った時に、夏という事もあったのだろうが、何か妙な熱気の様なモノを感じた。
ふと仏壇の前を見ると遺影の老婆が座っていて、こっちをじっと見ている。
私に見えているのだがら、Fにも見えていたのだろう。
Fはその仏壇の前に座り、蝋燭と線香をつけた。
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