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ビニール傘をバチバチと叩く雨音がうるさく、Fとの会話もままならない状態だった。
ふと、私は古い家の低い庭木の向こうに人影が見えた気がして立ち止まった。
「何や…」
とFが引き返して来た。
その庭には上半身裸で、パッチ姿の爺さんが立っていた。
「おいおい、爺さん風邪ひくで…」
とFがその老人に声を掛ける。
すると、その老人は私とFの方を睨む様に見て、
「鍛えとるからこんなモンで風邪なんてひかんわ」
と言いながら、自分の身体をパンパンと叩いていた。
違う…。
私が感じたのはその爺さんじゃない…。
その家の中を見ると、割烹着姿の老婆が座っていて何かをやっているのが見えた。
あれ…。
私がその老婆に目をやると、直ぐにFも気付いた様で、私の肩を掴んだ。
よく見ると、毛糸で編んだモノを解き、その糸を巻き直している様だった。
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