友人Fの本懐5 - 雨宿りの庭 -

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Fは私に頷くと、その家の庭に入って行く。 「何かの健康法かいな…」 Fはそう言って老人に訊いた。 「わしらは雨の中でも行軍したんや。こんな雨、屁でも無いわ」 どうやら戦争の経験者の様だった。 私も一緒に庭に入り、扉の開いた縁側に立った。 やっぱり…。 さっき表から見えていた老婆の姿は無い。 「お前らも若いうちから鍛えとけよ」 老人は背中が赤くなる程にパンパンと叩いていた。 「ところで、婆さんはどないしたん」 Fは突然、その老人に訊く。 老人は私たちの方を見て、 「婆さんが死んでもう六年経つわ。なんや、うちの婆さん知ってるんか」 老人も軒下に入って来て、置いてあったタオルで濡れた髪を拭く。
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