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Fは私に頷くと、その家の庭に入って行く。
「何かの健康法かいな…」
Fはそう言って老人に訊いた。
「わしらは雨の中でも行軍したんや。こんな雨、屁でも無いわ」
どうやら戦争の経験者の様だった。
私も一緒に庭に入り、扉の開いた縁側に立った。
やっぱり…。
さっき表から見えていた老婆の姿は無い。
「お前らも若いうちから鍛えとけよ」
老人は背中が赤くなる程にパンパンと叩いていた。
「ところで、婆さんはどないしたん」
Fは突然、その老人に訊く。
老人は私たちの方を見て、
「婆さんが死んでもう六年経つわ。なんや、うちの婆さん知ってるんか」
老人も軒下に入って来て、置いてあったタオルで濡れた髪を拭く。
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