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「んっ」  腰と背中に回した手できつく掻き抱けば、重ねた唇から愛しい声が漏れる。  喰らうように奪ったキスのせいで、相手は早めの息継ぎを望んだようだ。が、そのタイミングを見逃さず、即座に角度を変え、さらに深く貪る。 「ん、ぅ」 「まだだ。もう少し」  強引な欲の押しつけだが、拒まれていないことはわかるから、もう少し、と我儘を言ってみる。  抱きしめた相手は、俺と揃いの浴衣姿だ。濃紺の地に、白と水色の流水文様。怜悧で涼やかな奏人によく似合っている。  それに合わせて俺の生地も選んだ。薄灰色の地に、紺と薄紫の流水文様だ。対照的なようで一対とも言える柄を見立てた自分の審美眼を、自ら褒めちぎりたい。 「ですが、このままでは、いただいた浴衣に皺が寄ってしまいます」 「あ?」  軽く首を振って俺とのキスから逃れた相手が少し焦ったように言ったことに、低い返しが漏れた。  浴衣に、皺? それが何だ。キスを中断してまで言うことか?  俺が贈った浴衣を着たお前を眺めて褒めて、その後にそれを俺の手で剥ぎ取る、までがフルコースなんだぞ? 皺くちゃ、どんとこいだ。 「構わない。皺くらい、気にすんな」 「します。気にしますよ。それ、煌先輩にとてもよく似合ってます。ずっと眺めていたいくらい、よくお似合いなんですから、ぞんざいに扱ったりしないでください」 「え……」  そっち? まさかの、俺の浴衣の心配?
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