3/3
前へ
/17ページ
次へ
「先輩がいろいろ考えてくださって購入されたものに俺が何を言う権利も無いですが、普通車と違って、かなり費用がかかったのではと思うと申し訳ない気がします」  あー、それな。キャンピングカーだから、そんな風に気を使うと思ってたよ。お前を乗せるから、一応、内装にも凝ってるしな。 「気にすんな。滅多に会えないお前と気兼ねなしにのんびりするために、これが必要だったから買った。俺の願望と我儘がこの形になってるってだけだ」 「それもわかってはいるんですが……」 「わかってくれてんなら、いい。それに、俺が車を用意した代わりに、食いもんや飲みもんは全部お前が持ち込んでくれてるじゃねぇか。サンキューな。ということで、これで変な気遣いもチャラにしとけよ」  せめてこれくらいは、というお前の気遣いを受け入れたせいで、今夜の俺、学生に奢ってもらってる社会人ってことになってるんだぜ?  「俺が食品を買わなければ、と思った理由は、他にもありますけどね。車内に入って設備を見せていただいたら、収納庫にはペットボトル一本すら準備されていませんでしたから」 「買い出しは、お前と一緒に行くつもりだったんだよ。というか、収納庫に入ってるもん、他にあっただろ。俺が何も準備してない、考え無しみたいに言うな!」  心外だ! 「確かに、ある意味、準備万端ですが。花火デートと聞いていたので、〝あれ〟だけが収納庫にずらりと用意されていても、俺は首を傾げざるを得ませんでした」 「首を傾げる意味がわからねぇ。キャンピングカーデートには必須だろう。ゴムとジェルは! あと、アフターケアの軟膏! これが一番大事だろ! ずらりと揃えて、何が悪いんだ!」  誰よりも大切なヤツの身体を傷つけないよう、万全を期すための品揃えだぞ。褒められていい案件だ。ガソリンより先に収納庫に準備した俺、偉い。  本気の恋って、こういうもんじゃねぇの?
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加