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「星の降る夜、火花散る夜、ですね」 「だな」  身を寄せ合い、静かに言葉を交わしながら、貴重な時を過ごす。  眼前には、空と海を鮮やかに染める、色とりどりの刹那の花々。パァッと花開くその上には、藍色の空から浮き出るように上弦の月が輝いている。見事な配置。狙ったような構図だ。  言葉少なに花火鑑賞する俺たちの頭上で、降る星の光と、地上から打ち上がる炎の煌めきは鮮明に絡み合い、瞬く間に消えていく。  俺は打ち上げ花火の種類には詳しくないし、奏人も口数が多いほうじゃない。よって、いつも通りというか、自然と今日も、二人揃って無言で夜空を見つめる展開になっているわけだが、居心地の悪さはいっさい感じない。  それどころか、時折、そっと顔を見合わせる度、ほわーっと胸が温まる。好きだなぁと思う。  今は、星と花火が織り成す光の競演を心に刻む時間だとわかっていても、身の内から熱が湧き出る。 「奏人?」 「はい」  バスケ部の先輩後輩という長身コンビが余裕で寛げるサイズで別注したコの字ソファーは、既に片側半分をフラットベッドに展開済みだ。浴衣姿でまったりと花火鑑賞するなら、やっぱ胡座だろっつーことで、片側だけ先にベッド仕様にしといた俺、グッジョブ。先見の明、ありありだな。 「奏人」 「煌先輩?」  互いに名を呼ぶ。ただ、それだけのやり取りの間に、胸に広がった焦熱が全身に伝わる。四肢に深く浸透したそれはすぐに欲となり、俺を駆り立てる。 「好きだ」  好きだ。好きだ。だから、触れたい。 「俺も、です。大好きですよ」  堪え性の無い先輩を許してくれる声と吐息があまりにも甘く、あまりにも蠱惑的で。 「奏人っ」  柔らかな唇を貪る以外の選択肢が、俺の中から消え失せた。
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