第一章:Perpetual Break

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凄まじい爆発が彼の姿を覆いつくす。 コースターに付与した永久機関を暴走させることでの爆発と、炎の矢の爆発。 二種の爆発によってレールは完全に消し飛び、かろうじて残った部分も大きく曲がり、無惨な姿に変形した。 彼の姿は無い。 灰すら残らず、跡形もなく消えたのであろうか。 それならそれでいい。本当はあの剣の力を私のモノにしたかったのだが、無くなってしまったなら仕方ない。 居合の残身のように、とどめを刺した後でも気を抜かず炎の剣を再度、生み出す。 ──殺気。 有り得ないと理性が叫ぶが、全力で速く剣を構えろと本能が絶叫する。 眼も向けられないまま、上方に向かって剣を伸ばす。 凄まじい衝撃が右手に伝わる。 無理矢理向けた瞳で見たのは、下に居たはずの彼が私の上から強襲してきた瞬間であった。 防御が間に合わなければ、脳天か首に致命傷を喰らっていた。 なぜ、速すぎる ──疑問は後回し。 防げた幸運に感謝しつつも、身体は衝撃の流れに従って地面へと降下させられる。 歯を食いしばって耐えつつ、地面への激突の瞬間に炎のオーラを足から噴き出して、強引に着地する。 舞い上がった土煙の中からすぐさま、彼が斬りかかって来る。 剣で受け止めつつ、二度三度、剣撃の応酬を行う。 超越者になる前は本気で殺し合ったこともないだろう、ずぶの素人が二人。 それでも様になっている動きができるのは、ひとえに先代の超越者の記憶のおかげ。 私にとってみればお姉ちゃんが残してくれた形見のようなもの。 それが、今、私を生かしてくれているんだ。 右手に残る重い痺れで、今、生きていることを実感する。 ……お姉ちゃんに感謝を伝える。 勿論、形見は記憶だけじゃない。 一番大事なモノ、私が受け継いだ、永久機関の神霊兵装。 意識を周囲に向ける。 ──ちょうど良いのがあった。 動く四つ足のパンダ、何台かのコースアウトしたゴーカート、子供用の小さなジェットコースターから飛び出したコースター。 それらすべての永久機関を暴走させ、彼に向かわせる。 時間差全方位攻撃。 彼に最接近した瞬間にオーバーロードするよう調整して溜まっていた熱を解放、大爆発させる。 辺りが粉塵に包まれる。 先の反省を活かして、手は考えた。 視界を確保するために剣から炎を吹き出して振り回す。 煙が晴れるとそこには、彼の姿はいない。 今度は大きく地面を蹴ってバックステップ。 限界レベルまで熱を溜めて蹴ったので、半ば爆発に近く、吹っ飛ばされる。 瞬間、私が居た場所に上空より現れた彼が剣を振り下ろして辺り一帯を吹き飛ばす。 上手くインパクトのエネルギーを地面に与えているのだろう、私が逃げた先まで地面がひび割れる。 不発に終わった二度目の奇襲。彼は臆することなく、再度私に向かってくる。 私はさらに後ろに下がりながら辺りのアトラクションたちを総動員させて彼に向かわせる。 敢えて、一手ごとに連続させての突撃として調整。 避けることも、オーラを纏わせた剣で吹き飛ばすことも可能。 その様子を見て私は考察する。 ……おそらく、彼の瞬間移動には何かしらの制限がある。 この状況で横方向の瞬間移動、私に対しての突撃を行わない辺りそう自由なものではないらしい。 勿論、手の内を隠している可能性はある。 だが、彼の戦い方はオーラを著しく損耗する戦い方だ。 現に、瞬間移動するごとにオーラの勢いは大きく下がっている。 彼にとっても大技なのは間違いない。 なのに、今こうして攻めあぐねている。 二回も失敗して有効打ではないと判断したのか、使いどころを見極めているのか。 いずれにせよ、私の総動員攻撃に耐えられるのも時間の問題だ。 必ず、勝負を決めてくる。 二度の瞬間移動での共通点は 『私の上方から現れた』 『瞬間移動するタイミングは把握できなかった』 の二点だ。 瞬間移動後の座標点を自在に決められるなら、構えた剣先と私の心臓が重なるようにでもすればいい。 物体内には座標決定できないなら、ほぼゼロ距離でも構わない。 つまり、彼の瞬間移動には対象より一定の上方距離が必要となるのだろう。 それはブラフで、ただ、私の死角を狙って二回とも上からの奇襲にしたかもしれない。 だけど、二回目は対応されるのが普通。 事実、対応されてからの戦闘経過はこちらが有利だ。 距離を詰めようとしてきてはいるが、二歩踏み込んでも届かない距離を保てている。 それに、私の狙いの位置までもう少しだ。 相手の能力は、ある程度わかった。 そろそろ決めにかかろう。 こちらも時間の問題は、ある。 誘導してることを悟られないよう、アトラクションの弾数を確保するための移動と見せかけながら、後退を繰り返す。
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